指導医向け、研修医向け
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シリーズ 悩める指導医へのあるある辞典 -よい指導医ってなんだろう?-
救急診療に携わるエキスパートより、指導医の方々向けのメッセージを頂戴いたしました。
「強く、正しく、賢い」というと一般には凛々しくて素晴らしい医師像を思わせるが、現代の医療において本当に必要な姿なのだろうか?「やられたらやり返す、倍返しだ!」と敵を作ったところで、局地戦には勝てても大局的には損をすることが多い。我々の敵は患者でもなく、他科の医師でもなく、共通の敵は病気なのだから、対人関係において「倍返し」は敵を増やすだけになる...
「最近の若者は・・・」という言葉は古今東西、昔から何度も繰り広げられてきた。我々の世代は「新人類」と呼ばれ、現代は「ゆとり世代」、そのうち「宇宙 人」にまでなってしまうんじゃないかしら?我々だって、リーゼント(ちょっと古すぎ?)や長ランが流行り、、今はお尻まで見えるんじゃないかというような ズボンをはき(腰パンというらしい)...
「研修医指導は面倒くさい」そう思う気持ちもわからないではない。日常業務だけでも忙しいのに一文にもならない研修医教育に時間を割き、ちょっと教えてあげると今度は「カンファランスぐらいやってもらえないんですか」といい、そのうち「トレーニングコースぐらい開いてくれないんですか」という。
研修医達の悩みは尽きない。将来どんな専門医になりたいか。どんな研修を受けたらベストなのか?華々しい経歴を持たないといい医者にはなれないのか?などなど。
医学的知識が患者さんよりあるのは、医師として当然のことであり、患者さんが医学的に間違ったことを言っても、まずそれを受け止めるだけの余裕がないといいコミュニケーションは取れない。まず目の前の患者さんに人として興味を持って接することから始めるように指導したい。
研修医も様々、指導医も様々、教える環境も様々な中で、テーラーメイドに指導できるように気を配ればあなたも指導医マスターだ。楽過ぎる研修では決していい医者は育たない。「ちょいつら」がキーワードだ。能力に合わせた「ちょいつら」研修を提供できるようになれば、あなたも指導医マスターだ。
ERで初期診療に当たる研修医は病院の顔であると言っても過言ではない。この初期研修医を手厚く大事に教育する場こそがERであり、入院患者の多くがERを経由して入院してくるのだから、ERをないがしろにする病院はいい臨床研修病院とは言えない。
世界の情報をアップデートするためにしっかり英語論文を読み込むのは重要だが、実は本当に重要なのは、無駄な論文に時間をかけないこと、論文を素早く読み捨てることなのだ。
患者指導も看護師指導も研修医指導も基本的に同じなのだ。患者さんだけを指導するのが医者だとしたらさびしい話だ。ドクターとはラテン語で「教える」という言葉を語源に発しており、教えることは医者の仕事のコアになっていると自覚して初めていい指導医になれるのだ。
「どうしたら・・・を回避できたと思う?」「次どうしたら改善できるかな」と聞くと未来志向でポジティブになれる。また、意見を述べるのも「自分なら・・・するな」などと言うと受け入れやすい。「I」メッセージ、つまり主語を自分にするのだ。
一味違うコミュニケーションでロールモデルになろう~「愛のあいうえお」~
大学のOSCE(Objective Structured Clinical Examination)ではお作法にのっとった魂の抜け殻のような病歴聴取で何を聞いたかどうかが試される。でも実際の医療ではいかに患者さんの心をつかむか、いかに患者さんに心を開きたいと思わせるかが重要だ。
臨床だけをしていればよい時代は終わり、患者教育、看護師教育、それに加え、研修医にもしっかり教育しないと病院自体が生き延びられない世の中になった。時間外の仕事もなかなかストレスが多く、疲労と仕事量のプレッシャーから、「ほら、だんだん人格が崩壊してくる」と感じることもあるとか、ないとか・・・
研修病院を受診したのに、「研修医になんて診てもらいたくない」と堂々と怒りをあらわにする患者さんもいる。ここは指導医として、研修医を守るつもりで、そんな患者さんを説得するのではなく、さっさと診察してあげよう。
人にとってたった一度にして最大の悲劇でもある死。いくら医療者である自分にとっては日常的な死だからといって、流れ作業的に人の死を扱う医師であってはならないと僕は思う。いったいどうすることで、死に直面した患者さんの家族や医師である自分、そして一緒に蘇生措置を行ったスタッフのストレスや不安を軽減することができるのか、その方法を探ってみようと思う。
「高熱が出た」と訴える母親に抱かれている赤ん坊、交通事故で救急搬送されたけが人……。軽症者から重症者まで多くの患者さんが入院できずに待機しているERはまるで、人でごった返す野戦病院のよう。そんな日本の救急混雑の原因は、いったい何なのだろう。軽症者を引き受けるから?救急病院が少ないから?今回は、ERが抱える問題点とその解決法を探ってみよう。
専門医を目指して邁進する後期研修医は本当によく働き、よく勉強をする。その熱心さをずっと持ち続けると、将来いい医者になるだろうとつくづく感心させられる。元気だなぁ、若いなぁと感動して見ている指導医はさておき、後期研修医本人たちは意外に(?)焦っているということも多いらしい。なぜって?そりゃ勿論、初期研修医と違っていろいろ悩みは多いのだよ。
医者にとって何が怖いかって言われれば、なんといったって“見逃し”。患者さんは必ずしも典型例でやってくるわけではない。この見逃しでいちばん多いのが“胸痛”を伴う疾患だ。胸痛のワースト3は心筋梗塞、大動脈解離、肺血栓塞栓症。今回は、この3つの疾患に焦点を当て、医療者にとって最大の敵ともいえる「胸痛」とどう戦うかをレクチャーしようと思う。
救急には酔っ払い、怒っている人などいろんな人が錯綜しているから面白い。症状をうまく表現できないストレスが募る場合、自分の認識ではすごく緊急を要すると思っているのに待たされてしまう場合、とにかく不安を怒りという形でしか表現できない場合などいろんな事情で爆発してしまう患者さんがいるのも現実の問題だね。
瞬時に患者さんの容態を把握し、より迅速かつ適切な治療が求められるER。時間との勝負が要される現場でもあるだけに、指導医からの指示をただ待ってばかりではいられない。だからこそ、常に心に留めておくべき“心得”を訓示として伝授しておこう。まずは一日一回、呪文のように唱えること。この“救急心得”を頭にインプットしておけば、いざというとき慌てず、落ち着いて対処できるはず。
研修医教育って邪魔臭いという意見がちらほら聞かれる。地方はどこも医師不足でそんなこと言わないで喉から手が出るほど人手が欲しいのに、なんと贅沢な・・・という人もいれば、以下のように初期研修医教育とはまったくかけ離れたスタンスをとっている人もいる。
診察をしているとどうしても出てくる患者さんと医者の見えない壁。とかく、患者さんの心配は医学の非常識であり、逆に、医者の常識は世間の非常識というものだ。その点を理解し、身体だけではなく、患者さんの心もハッピーにしてこそプロの医師。患者さんにとっても、医師にとっても、病院にとっても満足度の高い医療を実現するヒントを一緒に考えてみよう。
急性の発熱の場合は、やはり感染症が原因となっていることが圧倒的に多い。その原因がウイルスであれば特殊な場合を除けばほぼ心配はないのだが、それが頑固な細菌感染だとこれはやっかい。無口な感染症はいったいどこに?患者さんの身体に潜んでいる感染巣の手かがりを探ってみよう。
学問上の興味と市中病院の忙しい臨床で経験できることとは、必ずしも一致しないものである。検査漬けで頭の悪い研修医を作っているのは他でもない指導医の後姿なのだ。(失礼!そうじゃない人の方がはるかに多いけどね)治療の開始時間がカギとなる感染症だからこそ、医者の判断力は問われるもの。患者さんの利益を考えて、検査の必要性をきちんと判断して対応したい。
医療とは決して医師ひとりでできるものではない。多くのコ・メディカルとのチームワークに支えられて医療は成り立っている。応援に駆けつけてくれた医師や手伝ってくれるコ・メディカルと円滑なコミュニケーションが図れてこそ、いい医療が展開できるというもの。だからと言って飲みニケーションだけに頼っていてはダメだよん。
すべての患者さんが医者をありがたがってくれる時代はもう終わり。なかにはトンデモ患者が御託を並べ、敵対心をむき出しにしてやってくることもあるくらいだ。「イヤなら帰れ」と言いたいところだが、それはもちろん無理。患者さんはプロではないのだから、医学的に正しいかどうかよりも、その訴えを真摯に受け止めてあげる余裕を持ちたいね。
ハイリスク疾患とは、見逃してしまうと患者の予後を左右しかねない怖い疾患のこと。古今東西、先人達も同様の疾患に騙されて痛い目にあってきた。「騙されたぁ!」と嘆いても、患者の命がかかっているから、そうそう簡単に許されるものではない。指導医はそんな疾患の詐欺(?)の手口を知っておいて、未然に研修医が落とし穴にはまらないように目を見張っておかなくちゃね。
Time is life」。救急の現場では、まさに時間との勝負。ちょっとした判断の遅れ、時間の遅れが生死を分けるという恐ろしさはつきものなのだ。そして、「Time is money」。医療訴訟費の高騰など、今や医療現場では金銭に関わる問題もひっきりなし。急性期疾患だって、感染症だって、時間との勝負は避けられないよ。さぁ、一瞬の判断が命とりにならないように、ヨーイ、ドン!
「最近の研修医って、まるで宇宙人のようだよ」と嘆くあなた。自分たちだって若い頃は「新人類」と言われていたのではないか?逆に、研修医から見れば「とんでもない指導医」もたくさんいるはずだ。人をとやかく言う前に自分をなんとかしなくちゃ。後輩に後ろ指をさされるような指導医にならないためには、いかにして自分の広い背中を見せられるかがカギになるよね。
みんな素直で優秀で気の利く研修医だったら、こんなにラクなことはない。そんなことは、もちろんあるわけない!研修医もデキのいいのから悪いのまで多様性に富んでいるからこそ面白いもの。もし、あなたが昔ながらの“厳しくてなんぼ”のスパルタ教育がしみついて、「最近流行の指導法なんてさせられて、なんだか腑抜けになってしまった」と嘆いていたら…。
忙しい外来で研修医に手取り足取り教えていると患者カルテが積み上げられてしまうし、教えないと見事にドジを踏んでくれるし、いやはや臨床と教育の両立は大変だ。今回は忙しい中でも効率的に教える方法を見てみよう!
シリーズ アニメーションで学ぶ救急医療ワンポイントメッセージ
研修医が学ぶべき事例をアニメーションと動画を使い解説します。