Heart Hospital

旭川医科大学病院小児科 更科 岳大先生
血液・腫瘍内科 進藤 基博先生

旭川医大における血友病の診療状況

患者さんの診療状況や通院者数等を教えていただけますか。

進藤先生血液内科を定期的に受診されているのは12名で、29歳~71歳までの成人患者さんです。多くは重症型の方で、半数以上の方が旭川市内と近郊から通院されていますが、道北や道東から通院されている方もいらっしゃいます。当院に定期通院されている方の中には軽症の方はいません。北海道の中には、まだ血友病と診断されていない患者さんがいるかもしれません。また、血友病と過去に診断されたけれどもフォローアップされていない方がいらっしゃるのではないかと思います。手術等を受ける際に初めて血友病と診断される方もいるように思います。

更科先生小児科では当院で定期的に診ている方が7名程。その他は進藤先生がおっしゃったように遠方でなかなか通院できない方もいらっしゃいまして、出張医として診療している網走厚生病院と連携をとりながら診ている方が1名おられます。他院から紹介いただいたりする場合もあり、年齢層は、生まれたばかりの赤ちゃんから上は30代後半位の方までいらっしゃいます。全て道北・道東の方です。インヒビターを有する患者さんについても診療を行っております。

他科との連携についてはどのような状況でしょうか。

更科先生小児科と歯科口腔外科との連携では、歯科に関連する合併症があった場合や通常の抜歯等、血友病児で観血的処置が必要な時には止血管理の対応をさせていただいております。また、こちらから歯科口腔外科に血友病児の口腔ケアの指導を目的にご紹介するなど、相互にスムーズに連携しています。

進藤先生小児科と同様ですが、こちらには歯科口腔外科からの紹介も多く、当院を受診していない血友病やフォン・ヴィレブランド病の患者さんが抜歯する場合は歯科口腔外科と当科を受診していただき、並診して対応しています。そのようなことが年数回あります。また、整形外科に関しては、肘や膝の専門医がいらっしゃいますので、症状が出たときに診察していただくという形で連携しています。

その他北海道内の病院との連携はどのようにされていますか。

更科先生ブロック拠点病院である札幌徳洲会病院に年に2回、血友病関節症の診療経験豊富な竹谷英之先生(東大医科研病院関節外科)が外来に来られ関節障害を適切に評価していただけるので、患者さんに外来を受診していただく機会を作ったり、一緒に勉強させてもらったりしています。最近はエコーを使った血友病性関節症評価を実施されているようなので、新しい手技を勉強したいというきっかけにもなっています。

進藤先生また、凝固異常で診断の難しい患者さんもいらっしゃいますので、北海道医療大学の家子正裕先生に診断の助言を頂いたり、HIV患者さんやC型肝炎、頭蓋内出血については北海道大学病院にコンサルトしたりして、北海道内で協力体制をとっています。

旭川医大の診察の特徴

旭川医大病院の診察・治療の中で特徴的なことがございましたら教えてください。

更科先生当院では第Ⅷ因子が院内で測定できますので、他施設から紹介いただいても手術がしやすいという特徴があります。最近は膝関節の置換手術がありましたが、整形外科の先生が普段の手術の出血量とそんなに変わらないと言ってくださいました。第Ⅷ因子を測定できることが適切な止血管理につながったと思います。その他、自己注射の指導に関しては経験のある優秀な看護スタッフが数名おり、これまで蓄積した経験をうまく次に引き継いでくれています。そして、患者さんのペースに寄り添って、焦らずじっくり指導しているので、これまで自己注射の指導で苦労したことはほとんどありません。

後天性血友病の患者さんを診察されたことはありますか。

進藤先生昔から現在まで後天性血友病と診断された患者さんは8名いました。後天性血友病との判別が難しい後天性ループスアンチコアグラント等の症例は、私共も参加している「北海道後天性血友病診療ネットワーク」を通して北海道医療大学にコンサルトしてフィードバックしてもらっております。最近では他診療科でも経験があってすぐに連絡をいただけるのであまり苦労せずほとんどの方が救命できています。

血友病診療の目指すところ

後進の育成や診療について、今後目指しているところをお聞かせいただけますか。

更科先生育成は大切な部分ですが、自分自身の経験から申し上げると、血友病患者さんのことは外来診療を経験しないと学ぶことは難しいと思います。最近では、若い先生に企業が実施している血友病講習会・研究会等に参加を促し学んでもらっています。

進藤先生血液内科はスタッフも少数ですので、血友病患者さんは外来の医師全員で診療しています。決して多くはない血友病の患者さんですので、情報はなるべくみんなで共有するという形にして、血友病の診療レベルをどんどん上げていけるようにみんなで努力しています。北海道内は凝固異常を熱心にやられている先生が比較的多いので、年に1回勉強会を実施しています。「北海道後天性血友病診療研究会」等、なるべく若手にも研究会に参加していただき知識を深め、興味を持っていただくことで育成につながっていけばよいと考えています。

(2019Vol.63冬号)
審J1912176

左から進藤 基博先生、更科 岳大先生
左:進藤 基博先生 右:更科 岳大先生
旭川医科大学病院
所在地
〒078-8510
北海道旭川市緑が丘東2条1丁目1番1号
TEL:0166-65-2111(代表)
http://asahikawa-med.ac.jp

奈良県立医科大学名誉教授・前学長 吉岡 章先生からひとこと

旭川医科大学病院は広大な道北地方の拠点病院として活躍されています。小児科と血液内科の双方に専門医がいらっしゃって連携されており、患者さんは心丈夫ですね。院内で第Ⅷ因子測定が可能なことで、診断や手術時・補充療法時の効果判定が迅速に行えるのは大きな強みです。また、後天性血友病やループスアンチコアグラント症例のご経験も豊富で、安心ですね。