薬剤師のハートトーク

お薬手帳に表示されるこなぐすりのふかしぎ

とある日、院内調剤でお薬手帳に貼付する処方内容のシールを準備して、服薬説明を行った時の話です。

幼児の親御さんがお薬手帳に貼付したこなぐすりの用量表示を指差され、本日処方された用量と以前、別の調剤薬局で同じ薬を調剤されたページを開いて、「どうして表示内容が異なるのでしょうか?」と、不安そうに質問をされました。内容を確認すると原薬量と製剤量の表示でした。

原薬量とは有効成分のお薬の量のことで、製剤量とは色々な添加剤が加えられた製品としての量のことです。このようにこなぐすりの用量表示は2種類あり、実際には同じ用量でも原薬量で表示される場合と製剤量で表示される場合があり、その表示方法が統一されていない現状があります。
もう少し詳しく例をあげて説明します。

例えば体重30kgの小児に

解熱鎮痛消炎剤1回量1日量
Rp. アセトアミノフェン細粒50%300mg900mg
1日3回 毎食後 7日分

上記では原薬量で記載されています。しかし、調剤薬局によっては、

解熱鎮痛消炎剤
Rp. アセトアミノフェン細粒50% 1.8g(まれに12.6gとも記載)
1日3回 毎食後 7日分

これは、アセトアミノフェン細粒50%は1g中にアセトアミノフェンとして500mg含有されているので、1日900mgは製品で1日1.8gとなり、7日分では1.8g/日×7日=12.6gとなります。ちなみに、アセトアミノフェン細粒50%は1000mg中500mgがアセトアミノフェンで、残りの500mgは添加剤のヒドロキシプロピルセルロース、乳糖水和物、サッカリンナトリウム水和物、黄色5号、香料となります。

こなぐすりの色々

こなぐすりは、散剤、細粒、顆粒、ドライシロップなどの種類に分けられます。元々これらのこなぐすりの長所は、小さなお子様や高齢の方に対して年齢や体重を考慮した用量調節ができることです。特に乳幼児の用量は、微妙なさじ加減が必要で、慎重に調剤することが求められています。また、嚥下困難の場合に飲ませやすく、経管からの投与もできるという特徴があります。
こなぐすりは、有効成分に賦形剤や添加剤を加え混和し均質にされており、胃腸からの吸収が錠剤やカプセルなどに比べ速く、そのため効果も速く表れます。細粒や顆粒は、粒子の大きさによって区別されています。ドライシロップは、糖類又は甘味剤を用いて顆粒や散剤に準じて調製されており、甘みや香りなどが付いているので小児には飲みやすくなっています。
注意事項として、ミルクや食事となるもの(ごはん、おかゆ、おかずなど)にこなぐすりを混ぜて飲ませることは、絶対やめてください。ミルクに混ぜることによりミルク嫌いになったり、また食事に混ぜることにより食事しないようになったりすることがあります。ドライシロップは、基本的に水に溶かして飲ませますが、甘みを増すために柑橘系のジュース、スポーツ飲料、酸味のあるものなどを混ぜるとかえってお薬の苦みを倍増させてしまうことがあるので注意が必要です。

○ 比較的問題がない食品

リンゴジュース、プリン、ココア

× 混ぜない方が望ましい もしくは混ぜない

アイスクリーム、ハチミツ
牛乳、柑橘系のジュース
スポーツ飲料、酸味のあるもの
ごはん、おかゆ、おかず

中にはコーティングがはげて苦味を生じたりする薬もありますので薬剤師にご相談ください。


今回の親御さんには、こなぐすりの用量表示について、丁寧な説明をすることによって理解していただけました。このように、お薬について不安なことは、薬剤師にお尋ねいただいて、十分なコミュニケーションをとることが大切なことだと思います。

(2017年Vol.53夏号)
審J2005097

稲村 由香 産業医科大学病院 薬剤部