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血友病と臨床検査について

血友病との出会い

私が血友病患者さんについて臨床検査を通してサポートさせていただくきっかけは、1996年9月に奈良県立医科大学小児科学教室の研究室へ入職したことです。それまで血友病について教科書では学びましたが、実際に検査に携わったことはありませんでした。奈良医大小児科の検査室・研究室では従来から外来や入院患者さんに対して、迅速に凝固因子活性値やインヒビター力価を測定後、医師へ報告し、患者さんの診断や治療効果の判定をサポートしています。また、詳細な凝固因子解析も実施している施設です。患者さんの治療に真摯に向き合う医師の後ろで、検査を通して患者さんのお役に立つことに、とてもやりがいを感じました。

臨床検査技師とは?

臨床検査技師は、多種多様な医療の検査が実施できます。採血による血液検査では、白血球や赤血球などの細胞数の計測や、肝臓や腎臓の機能を各種生化学検査で評価します。また尿や糞便検査は痛みを伴うことなく体の中の情報を得られる貴重な材料として、腎機能だけでなく感染症やがんなどの検査が実施されます。手術などでは病理組織、輸血の際には輸血検査があり、臨床検査技師は、検査に関して熟知していますし、患者さんと直接関わらせていただく生理検査では、心電図、超音波検査、脳波検査など、医師の指導の下で様々な検査ができます。私は、学生の頃から、血液検体の向こうには患者さん個々がいらっしゃる、と教わりました。現代の医療現場では臨床検査はなくてはならないものです。

血友病と検査

凝固検査では、プロトロンビン時間(PT)と活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)があります。血友病の場合には、PTは正常ですが、APTTが延長します。次いで凝固因子活性測定で第VIII因子(FVIII)あるいは第IX因子(FIX)が低下すると、血友病と診断されます。この検査は、院内検査を実施している施設では数時間で、専門検査会社に依頼する施設では結果が出るまで約1週間かかります。また、FVIII製剤投与の効果が減少するインヒビターの有無についての検査も実施します。インヒビターが検出されると使用される血液製剤が異なるため、インヒビターの発見はとても重要です。さらに血友病専門施設の中には、FVIIIあるいはFIX遺伝子検査を実施することで詳細な解析や、インヒビター発生のリスクの評価が可能となります。一部の専門施設ではROTEM※を用いて凝固因子だけでなく、血球成分も含めた凝固能が同時に評価できる施設もあります。検査を通して、患者さんに安全で安心な治療をサポートしております。

これからの検査

血友病治療は今後、患者さん個々に対応した治療計画が実施され、臨床検査も同様に個別化されると考えられます。そのためには、患者さん自身の凝固機能について評価することや、製剤の輸注効果だけでなく、予防投与ではどれくらい薬効が残存している(トラフレベル)のかを評価できる検査、すなわち、低濃度域における正確な凝固因子活性測定法の確立は大切です。最近、出血のターゲットとなる関節を超音波検査で早期に、かつ非侵襲的に検査し、早期止血や出血予防で関節を守ることが話題になっています。患者さんの出血時の痛みを少しでも軽減するために、我々臨床検査技師は、陰ながら医師のサポートを通して患者さんに貢献できるように努めてまいりたいです。私は今年の4月から、天理医療大学臨床検査学科に移り、教育に携わらせていただいております。これからも血友病検査の新たな開発に精進し、また学生には今後、患者さんのことを第一に考えられる臨床検査技師として現場で活躍する医療人になってもらいたいです。

※ROTEM(トロンボエラストメトリー):全血の凝固能や血栓の堅固性について評価できる検査法。

(2018年Vol.58秋号)
審J2005101

松本 智子 天理医療大学 臨床検査学科 臨床検査技師