Heart Hospital

いいづかファミリークリニック院長 飯塚 敦夫先生

診療状況と地域の特色

いいづかファミリークリニックに通われている患者数や診療状況を教えてください。

飯塚先生現在、定期受診している患者さんは9名で全て血友病Aです。年代は7歳の小学生が1名、10代が3名、20代が2名、30代が2名、60代が1名です。60代の患者さんは軽症血友病で外傷がないと受診されない方です。20代以下の方は赤ちゃんの時からずっと診ている患者さんで、これまでほとんど関節出血も起こすことなく過ごしており2人はスポーツ少年団から中学生まで野球を続け、1人は中学生で軟式テニスを、1人は高校生で弓道をしていました。しかしながら30代の2名は膝に血友病性関節症があり、松葉杖を使用しており、整形外科的な管理が必要なため、東京の荻窪病院に定期的に通院しています。2人共これまで関節が痛くなってからしか薬剤を使用していませんでしたが、その内1人は、就職を契機に週2回きちんと薬剤を投与するようになり、その後はほとんど出血することなく、また体重を減量したことで関節の負担が減り膝の痛みが殆どなくなりました。その結果、考え方が前向きになって現在は生き生きと働かれています。

地域の特色や、地域連携について教えてください。

飯塚先生福島県は北海道、岩手県に次いで3番目に広く、内陸側の会津、中央の中通り、太平洋側の浜通りという3つの地域に分かれています。通院患者さんのほとんどは会津地域の方ですが、お1人だけ車で片道2時間かけて通院されている患者さんがおられ、この患者さんには万が一に備えて早めに家庭注射を導入しました。地域連携については以前勤務していた会津中央病院がすぐ近くにあるので、骨折、良性腫瘍の摘出、及びクモ膜下出血例などを紹介し対応してもらいました。また、歯科についても口腔外科にお願いしています。病院に依頼する場合には、血液製剤をまず投与してから搬送し、当院で投与量と投与期間など補充療法のスケジュールを管理して紹介先の先生と連携し合っています。逆に会津中央病院からも血友病以外で相談を受けるなど連絡を取り合っており、スムーズな連携ができていると思っています。そして、東京に進学・就職する患者さんは荻窪病院などに紹介しています。また、修学旅行等で会津に来られる全国の患者さんをお願いされることもあります。

いいづかファミリークリニックの特長

自己注射の指導開始時期や指導法は?

飯塚先生家庭注射や自己注射導入の年齢は皆さんとほとんど同じだと思いますが、小学校に入ったら母親・父親に静脈注射の練習をしてもらい、上手くいくようになれば家庭注射を始めています。患者本人には溶解操作や消毒を小学生になった頃から練習し始め、きちんとできるようになったことを確認して、小学校の高学年頃に自己注射の導入を始めています。個人差がありますので何もかも一度に練習することは難しく段階的に週二回は通院してもらって導入するようにしています。

いいづかファミリークリニックならではの特長はどのようなところにあるのでしょうか。

飯塚先生当院は6名の看護師全員が血友病患者さんに対応しています。開業当時からいるスタッフばかりなので、患者さんのこともよく知っていますし、お母さんたちとも仲良しになってくれています。特に一番若い志賀君は血友病Aと診断されて以来私が診ている患者さんで3年前からうちで看護師として働いています。私の診察前に志賀君が患者さんと話をして問題点をチェックしてくれるので診察がスムーズにいっています。患者様の良き相談相手にもなってくれています。

荒井さん会津中央病院の頃からスタッフがずっと一緒で、患者さんが小さな頃から診ていますので、気心がよく分かっています。自己注射の管理については患者さんがいつ、何単位を注射したという記録を携帯のアプリに入力したものがデータとグラフで1か月毎にメールで届き、先生や看護師全員で情報共有しています。全て定期補充療法で、看護師がケアをしながら話や悩みを聞いた上で、薬剤をお渡ししています。本人に治療に対する自覚を持ってもらい、自分の体を自己管理できる大人になってもらうことを目標にしています。一人ひとりに、丁寧な対応ができるのがクリニックの最大の長所ですね。

志賀さん高校を卒業して1年間荻窪病院に通院しました。病院だと担当医が休みで診てもらえないことがあり、患者数が多く自分の顔を覚えてもらっていないのでは?と心配になることもありました。ここでは先生やスタッフがいつも変わらずいてくれるので安心して診てもらえると思います。看護師として患者さんには病気のことだけを話すのではなく、気軽な会話をしてから痛いところはないかとか今の状態を聞きとるようにしています。

飯塚先生志賀君は、10代20代の患者さんにとってお兄さん的な存在で、血友病患者と看護師という他のスタッフとは違うスタンスで相談を受けています。また、クリニックの良い点は他の病気でご両親や兄弟も通っているので、家族背景が把握しやすいところです。病院で診ていたときよりクリニックでの方が患者さんや家族と親密になれるのでなんでも話してもらえ、コミュニケーションがよくとれていると思っています。

クリニックの役割と今後目指す体制

今後、目指していきたい医療とクリニックの役割について、どのような考えをお持ちでしょうか。

飯塚先生小児科医として、患者さんをいかに関節症などの障がいのないまま成人に育てて内科の先生にお願いするのが役割だと考えています。血友病患者さんを診ている者としてそこを一番の目標にしています。昔のように関節症や色々な問題があった時代は、整形外科、歯科等の包括的な医療が必要だと考えていましたが、現在のように定期補充療法が定着して障がいのない血友病患者が多くなれば、包括医療の重要性は以前ほどではなくなっていくと思います。それから、福島県では患者会の活動があまり行われておらず、宮城県の友の会に参加する会津の子ども達がいましたので、当クリニックでも十数年前から家族会を行っており一昨年に第4回目の家族会を行いました。当クリニック以外の家族も参加し、成長した子供たちの様子を確認し、お互いに自分の経験を話してもらい、家族同士でも話し合い有意義な時間を過ごせました。そういう場で代表として溶解操作や自己注射をみんなの前でやってもらい、人に注目され緊張する場所で成功したことが自信にも繋がったようです。血友病についての教育や自己注射の再確認という意味もあり、今後もできるだけ定期的に家族会を開催していきたいと考えています。

(2018Vol.60春号)
審J2005103

左上から研修医・大塚 礼央先生、看護師長・荒井 ひろみさん、看護師・大堀 雅子さん、看護師・長谷川 みつ子さん、看護師・飯塚 陽子さん、看護師・志賀 誠也さん
前列・飯塚 敦夫先生
左:飯塚 敦夫先生 右:吉岡 章先生
いいづかファミリークリニック
所在地
〒965-0006 福島県会津若松市一箕町大字鶴賀字下居合59
TEL::0242-32-3330

奈良県立医科大学名誉教授・前学長 吉岡 章先生からひとこと

先生は大学卒業後、神奈川県立こども医療センター血液科で長尾大先生のご指導のもと、15年余りにわたり先駆的な血友病包括医療・ネットワーク化に参画し、他にもビタミンK欠乏性出血症でも大活躍されました。そのご経験を活かした現クリニックでの血友病診療は、高い水準のモデルの一つとして全国的に取り入れることがふさわしいと確信しました。家族ともども身近に相談と診療をお願いできるドクターとナースがいつもいてくださるのはとても心強いですね。