血友病看護師としての取り組み
-病院の枠を超えた支援-
日頃の定期受診の必要性
血友病の治療が進化し、様々な凝固因子製剤が開発され、自分に合った個別化治療が選択できる時代になってきました。そのことにより出血回数が減少し、製剤さえあれば問題ないと考え、病院の定期受診をおろそかにしていませんか。
しかし、定期受診は家庭輸注を実施する際の約束事にも含まれており、以下のことを確認するためにもとても重要です。体や関節などが、変わりないことを確認するうえでも定期的に病院受診しましょう。
- 自分の治療方法が自己流の治療になっていないか、診察と輸注記録により確認してもらう
- 自分も気付きにくい微小出血により関節に変化が起きていないか
- 生活パターンが変わった時にこのままの治療でいいのか
- 最新の情報収集
(製剤の使い方や新しい製剤の情報など) - 注射手技や知識の確認と修正
年齢が進むと共に血友病以外の定期健診も考慮
血友病患者さんも高齢化に伴う生活習慣病である高血圧、肥満、高脂血症、心筋梗塞、脳梗塞、癌なども見受けられるようになってきました。
普段のクリニック・病院受診では、血友病に関する検査が主で、癌などの検査は実施していません。
しかし、患者さんは普段の検査では、医師から何も指摘されないことから安心してしまい、血友病以外の病気まで診てもらっているという錯覚に陥っているのではないでしょうか。
これからは、高齢化に伴った疾患についても注意し、定期受診以外にも、自治体の健診や人間ドックも必要なことを理解して、健診を受けてほしいと思います。
病院の枠を超えた看護師としての取り組み
1983年から家庭輸注療法が認められ、家庭輸注導入の為に医師と共に看護師も関わってきました。
今では、血友病患者さん・ご家族を取り巻く環境も大きく変わり、以前は、周囲の人に病気であることを隠す傾向にありましたが、家庭輸注の導入が進み、重症血友病でも家庭で製剤を投与し、ふつうに社会生活を過ごされている患者さんがたくさんおられます。
最近では、共働きのご家庭もあり、関わる周囲の人々へ病気を伝えて、入園・入学することが多くなりました。特に小さなお子さんの学校生活において、担任の先生や養護教諭の協力が必要になります。
そこで、数年前から「血友病の子どもたちを担当される学校の先生方への勉強会」を医師やコメディカルの方たちと年1回、開催しています。医療スタッフ一同は血友病の子供たちが伸び伸びと学校生活が送れることを願って、病院の枠を超えた支援にも取り組んでおります。
また、血友病治療の進化により、小児の定期補充療法の早期導入や十分な凝固因子製剤の使用ができるようになり、血友病患者さんたちの生存年齢も長くなりました。患者さんの中には、高齢化に伴い自己注射が困難になってきている症例も散見されます。そのため、様々な問題へ対応するために訪問看護を導入している患者さんも増えてきました。
そこで、血友病と関わったことがない訪問看護師の方(本誌vol.64を参照)もおりますので、血友病を知ってもらうために看護師が中心となり、医師やコメディカルの方たちの協力を得て、年1回、訪問看護師との勉強会を開催しています。
今までは、病院との関わりがほとんどで、自宅への訪問に抵抗がある方もおられると思いますが、適切な医療サポートを受けることによって、少しでも自分らしく生活できるよう、まずは身近な看護師に相談してみてはいかがでしょうか。看護師は、他職種との連絡・調整役としても活動しております。
(2020年Vol.65春号)
審J2010339