風の音~輝く星たち~

「血友病患者さんの口腔健康管理をサポートします」

歯磨きや歯科医院受診について思い当たることはありませんか?

  • 歯磨きを敬遠してしまう。
  • 歯磨きが難しいと思っている。
  • かかりつけの歯科医院がない。

血友病患者さんは歯磨き時の出血が心配、ひじ関節の可動域が狭く歯磨きが難しい、また、受診できる歯科医院がわからないなどの理由で、歯科受診率が低い傾向にあります。

歯周病とむし歯

歯周病とむし歯

口腔内の2大疾患は歯周病とむし歯で、それらの主な原因は、プラーク(歯垢)です。プラーク=細菌が増殖して形成された細菌の塊であり、食べかすではありません。

プラークは、歯に付着している粘着性の沈着物で、非常に多くの細菌とその産生物で構成されています。プラークはバイオフィルムとも呼ばれ、歯に強固に付着し、薬品を用いた口腔の含嗽(ぶくぶくうがい)では除去されにくいです。プラークを除去する最も効果的な方法は、機械的な除去(ブラッシングなど)です。

プラークが付着したままで長期に放置すると、左上の写真のような歯周病あるいは、右上の写真のようなむし歯になります。歯周病になると、歯肉の腫れや歯肉からの出血、歯の揺れや口臭等の症状が現れます。むし歯が進行すると、冷たい物や熱い物、甘いものがしみるようになり、歯髄(歯の神経)を取らなくてはいけなくなります。さらには、歯周病もむし歯も、治療しないで放置しておくと、抜歯となるケースも生じます。

歯周病やむし歯にならないために

◎毎日すること:患者さん自身によるプラークの除去
歯科衛生士が、機械的にプラークを除去する方法(ブラッシング方法)をお伝えします。患者さん自身に合った歯ブラシによるブラッシング方法(セルフケア)を見出します。

◎定期的にすること:歯科医院を受診し、専門的な口腔健康管理を受ける
セルフケアによる口腔内状態の確認を行った上で、患者さん自身ではケアが困難な歯周ポケット内の細菌や歯石を、超音波装置などを使用して除去します。

症例

①初診時の口腔内の状況です。歯肉の腫れや、むし歯も認められます。原因となるプラークは見えにくいので、それらを染色液で染め出します。
②ピンク色に染まっているのがプラークです。多くのプラークが付着しているのがわかります。繰り返しますが、プラークが諸症状の原因です。
③治療後の歯肉の状態です。セルフケアの確立および専門家のケアにより、歯肉の腫れは軽くなってきます。歯周病の状態によっては、これに加えて歯科医師による治療が必要になります。

いつまでも美味しく噛める、食べられるために

歯科治療時に問題となるのは出血です。重症の血友病患者さんでは、出血を多く伴う歯科治療を行うときは、大きな病院での治療や入院が必要となることがありますが、止血治療の進歩によって、ほとんどの歯科治療は歯科医院で問題なく行うことができます。

本院歯科では、血友病患者さんのQOL(quality of life)向上のため、多職種による専門的・包括的な血友病診療に参画することで、多くの患者さんが口腔の健康を維持し、快適な食生活・日常生活を送れるよう努めています。

その際、歯科受診をしている方には継続することを勧め、またそうでない方には、定期的な歯科受診をお勧めしています。受診の間隔は、口腔内の状態に応じて異なりますが、半年に1回は受診されることをお勧めします。

歯科医師とともに歯科衛生士が、血友病患者さんの口腔の健康維持をサポートします。

(2021年Vol.67春号)
審J2104013

岡田 美穂 広島大学病院 診療支援部歯科部門 歯科衛生士