薬剤師ができること
〜自分らしく日々の生活ができるように〜
皆さんは薬剤師にどのようなイメージをお持ちでしょうか?薬を作るだけの人でしょうか?医師が作成した処方せんの記載どおりに薬を集めて、窓口で薬の説明をする人でしょうか?薬剤師は病院だけでなく、保険調剤薬局やドラッグストアにもおりますので、「こんな仕事をしている人」というイメージは人それぞれ違うかもしれませんし、そもそも病院の中となると更に印象が薄いかもしれません。今回は、私が病院薬剤師として普段行っていることについて、皆さんにご紹介をさせていただき、今後薬剤師を有効活用するための情報としていただければと思います。
私は現在、主に外来の診察に来られた患者さんにお薬の説明や飲み合わせ等、お薬に関わる相談等を行っています。特に2021年4月からは当院で新たに開設された「血友病科」も担当しています。この記事を読まれている多くの方は、これまでに血友病や関連するお薬のことで病院薬剤師とお話をすることは少なかったのではないかと想像します。確かにこれまでは薬剤師が血友病治療のお役に立てることは少なかったかもしれません。しかし、ここ数年の間に数多くの新しい薬が発売され、皆さんのお役に立てることが大幅に広がりました。
これまでの凝固因子製剤(以下、製剤と記載します)は定期的に注射する場合、週に3回程度のものだけでした。しかし、ここ数年の間に、より長い時間効果が持続する製剤が次々と発売され、週1~2回で済むものに加え、中には数週間に1回の投与でも大丈夫といったものも登場しています。しかし、全ての患者さんにとって、注射をする回数が少ない製剤に変更することが一番良い選択となるわけではありません。
と言うのも、それぞれの製剤の「効き方」に違いがあるからです。例えば、週1回の注射で済む製剤は、打つ回数が少ないため、打つための負担が少なくなるメリットはあります。しかし、打つ回数が少なくて済む製剤は、日常生活程度の関節等への負担であれば問題はありませんが、製剤を打って数日後にスポーツ等の日常生活以上の運動を行う場合は、運動に耐えうる血を固める強さ(以下、凝固因子活性と記載します)が残っていない可能性もあるため、追加で投与しないといけないかもしれません。このように、長時間効果が持続する製剤はスポーツ、運動はたまに、もしくはほとんどしないという方にはメリットはありますが、部活等で1週間に何回も運動するという方は、従来からある製剤をその都度使った方が良い場合もあります。また、薬の効き方は製剤の種類だけでなく、個人差や年齢によっても違ってきます。
このような背景のもと、私たち薬剤師は皆さんのライフスタイルをお尋ねした上で、製剤を打ってからの凝固因子活性の推移を見て、製剤の効果の持続時間を計算し、皆さんそれぞれの生活スタイルに適した製剤と、製剤を投与する最適な間隔のご提案等を行っています。また、従来の製剤は冷蔵庫で保管しなければいけないものがほとんどでしたが、最近では製剤によって違いはあるものの、室温保管で問題のないものや、短期間であれば室温保管が可能な製剤も出てきており、ご要望があればそういった情報提供も行っております。更に近年、次々に登場している新薬に関する情報に加え、デバイスの変更、製剤使用後のゴミの廃棄方法に至るまで、お薬に関わるあらゆる情報についても提供しています。また、製剤だけでなく、花粉症、高血圧、糖尿病等他の疾患の治療薬や飲み合わせについても相談、情報を提供しています。
皆さんが「自分らしく」日々の生活ができるように、それぞれの体の状況、ライフスタイル、製剤を含む使用しているお薬すべての体の中の動きを総合的に評価し、最も適していると考えられるお薬のご提案ができればと日々考えております。薬剤師と外来の診察で会われている方は少ないかと思いますが、お薬に関わる疑問、相談等があれば是非薬剤師にお声がけください。
(2022年Vol.70春号)
審J2203303