風の音~輝く星たち~

血友病保因者であるということ

私は血友病確定保因者です。

最初におかしいと思ったのは、小学生の頃、針で刺したような小さな傷が1週間治らなかったことです。父も血友病ですが、その頃は分かっておらず、母からも父は血が止まりにくいから似たのかもね、という感じでした。

その後、中学生になり、初潮を迎えると出血が多かったのか貧血になり、1年間鉄剤を飲み続けました。ヘモグロビン6.8(※)という数値に病院からは運動を禁止されましたが、部活では認められず、大変辛い思いで運動を続けておりました。

その後もたまに生理の出血は止まらず、20日以上になれば病院へ行き止血剤をもらうこともありました。

一番大きな出来事は出産です。長女の出産は予定の帝王切開でした。300mlぐらいの出血だと説明を受けていましたが、実際は3000mlもの出血に気を失い、輸血もされておりました。

それでも保因者や血友病というワードは聞いたこともなく、次女も帝王切開にて出産。やはり出血はなかなか止まらなかったようで、お腹の中にガーゼを大量に詰めての止血。後日そのガーゼを取り除くのは本当に激痛でした。

3回目の帝王切開で息子を出産。帝王切開でしたので、息子は血友病の新生児にみられるような内出血が起きることもなくきれいに産まれてくれました。

そして、息子が1歳を過ぎた頃、上唇小帯を切ってしまいました。口腔内での出血、病院を転々とし、最後は大学病院の口腔外科で縫合もしましたが止まりません。次の日の朝には小児科に回してもらい、たまたまいらっしゃった血液専門の先生に診ていただき血友病を疑われた時にはヘモグロビン6.3(※)。立ち上がることもできなくなっていました。

その時に息子の血友病が判明し、説明を受け、大変という思いの後に自分の身に起きていたことがやっと判明したことへの安堵感がありました。

「血友病保因者」これで全てが納得です。どうして今までわからなかったのでしょうか。

わかっていれば、中学時代ずっと我慢してふらふらになりながら部活を続けることもなかったでしょう。あんな大変な思いで出産することもなかったでしょう。

今、これを読んでいただけている方は保因者と判明しているか、疑いがあるか、だと思います。

それだけでも幸運ではないかと私は思います。保因者の方は、とても不安定だと思います。同じような出血でもすぐに止まることもあれば、だらだらと続くこともある。普段の生活では全く問題のない方もとても多いかと思います。でも、いざという時に大変な思いをするのは自分です。保因者健診について、今は本当に大切なことだと思っております。

わかっていて出産をするのと、何も知らずに出産をするのでは雲泥の差があります。自分の身も、赤ちゃんの身も守るためにはまず、自分の体をきちんと知ることが大切なのではないでしょうか。

私と同じように、お子様が血友病と判明して、初めて保因者であるかもしれないと分かった方もとても多いと思います。お子様のことで頭がいっぱいで、なかなか自分には目を向けにくいかもしれません。私もそうでした。しかし、少しずつでもご自身の体にも目を向けてみてくださいね。今、保因者について目を向けて下さっている先生方がいます。本当にありがたい気持ちでいっぱいです。そんな活動が全国の医師の方々にも広まっていくことを心から願っております。

※ヘモグロビン:赤血球に含まれ酸素を全身に運ぶ重要な役目を果たしています。減少すると貧血を起こします。(参考)基準値:男性14~18g/dl、女性12~15g/dl

(2023年Vol.73春号)
審J2303625

山﨑 裕子 血友病保因者