どんな症状?

どのような出血症状が起こりますか?

血友病のもっとも特徴的な症状は、関節内出血です。
出血は内出血が多いので、体内に血液が溜まった状態になって血腫けっしゅをつくります。この血腫が神経や血管を圧迫し、痛みなどの症状が現れます。
症状は出血する部位や程度によってさまざまで、いろいろな部位に急性・反復性の出血がみられます。
皮下出血、鼻血、口の中の出血などのほか、すり傷や切り傷、歯を抜いた時や手術時の止血が難しくなるケースもあります。特徴的な出血症状は、筋肉内出血、関節内出血といった体の深部での出血です(図1)。また、出血症状は、赤ちゃんの動きが活発になる時期から起こる可能性があります。


(図1)出血しやすい場所と症状
部位症状
関節内また、ひざ、肩、ひじや足首などの出血です。関節のれ、痛み、違和感、むずむず感などがあらわれます。関節内出血をくり返すと、関節の動く範囲や動きやすさが低下します。
筋肉内スポーツや作業(仕事)をしている時に起こりますが、原因がわからない場合もあります。もも、ふくらはぎ、尻、腕、腰や腹などの筋肉内に出血します。症状は、筋肉痛のような痛みから、だんだん熱を帯び、腫れてきます。
皮膚の下打ち身による内出血(青あざ)が起こります。
口の中口の中を噛む、歯肉しにくの炎症、時に乳歯のはえかわり、歯の治療などによって起こります。
血尿けつにょう腎臓や尿道にょうどうの出血によって、尿の中に血液が混入した症状です。必ずしも赤色でなく、検査しないとわからない場合もあるので、注意が必要です。
鼻の中鼻をかむ、ほじる、くしゃみなどにより起こりますが、原因がわからない場合もあります。花粉症などの鼻炎があると、鼻血はしばしば起こります。
けがによる出血切り傷、すり傷などの出血のほか、骨折などの大けがの際にも注意が必要です。
頭の中頭を打つことで起こりますが、原因がわからない場合もあります。頭が痛い、気分が悪い、吐気がする、痙攣けいれんする、熱がでる、元気がない、意識がもうろうとするなどの症状に注意が必要です。

(図2)出血の多い場所

出血した場合には、どのように対処すればよいですか?

製剤の投与以外の一般的な対処法は、①出血部位を動かさないこと(安静=Rest)、②出血部位を冷やすこと(冷却=Ice)、③圧迫止血を行うこと(圧迫=Compression)、④出血部位を心臓より高くすること(拳上きょじょう=Elevation)です(図3:これらをRICEといいます)。圧迫しても止血できない場合は、製剤の注射を行います。

ただし、状況によっては病院の受診が必要になる場合もあるため、あらかじめ主治医の先生と話し合っておきましょう。


(図3)圧迫止血と患部の冷却の仕方(RICE)
出血部位の安静 圧迫止血 出血部位の冷却 挙上

(図4)出血に対する処置の方法
処置のポイント応急処置製剤の注射
鼻血ガーゼ、脱脂綿だっしめん綿球めんきゅうを詰め込み、圧迫します。圧迫
皮下出血多くの場合には、何もしなくても血は止まります。
切り傷、すり傷清潔なガーゼなどで圧迫します。圧迫
口の中の出血何もしなくても血は止まることがありますが、
止まりにくい場合には、主治医に相談してください。
血尿多くの場合には、水分を多くとって安静にしていると血は止まります。
血尿を何度もくり返すなど、不安があるときは主治医に相談してください。
水分補給
安静

主治医に相談
▲: 圧迫止血などで止血できない場合には、製剤の注射をします

出血をくり返した時は、どのようになりますか?

関節内出血をくり返すと、関節が変形し、関節の動く範囲や動き自体が悪くなります(図5)。これを“血友病性関節症けつゆうびょうせいかんせつしょう”といいます。
関節内出血をくり返すと、関節の曲げ伸ばしができなくなり、日常生活が困難になることもあります。
そのため、血友病の治療では、関節内出血後のメンテナンスを行ったり、関節内出血を起こさないように凝固因子製剤の注射を行い、出血予防を行うことが大切です。


(図5)血友病性関節症(ひざ関節の場合)

関節内出血をくり返すと、関節内の滑膜かつまくが炎症を起こし、軟骨なんこつを破壊し、関節が変形します。


通常 関節症の場合
きちんと治療して、出血をくり返さないようにね

「血友病性関節症のメンテナンス体操」も合わせてご確認ください。血友病患者様とご家族様に向けて、日常ですぐに役に立つさまざまな運動療法等に関する情報をまとめています。


メンテナンス体操
監修:
藤井 輝久先生
広島大学病院 輸血部 准教授