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血漿分画製剤に関するQ&A

よくあるご質問を掲載しております。ご質問部分をクリックすることで、詳細な回答が表示されます。

血液製剤(血漿分画製剤)に関するよくあるご質問 血漿分画製剤の安全性については、弊機構のコーポレートサイトあわせご確認ください。

Q1 血漿分画製剤とは、どんなお薬ですか?

人の血液から製造される医薬品を血液製剤といいますが、この中で、血液中の血漿とよばれる成分から製造される医薬品が、‘血漿分画製剤’です。

血漿分画製剤は、血漿から有用なたん白質を分離・精製して製造されます。

(参考)

血液は、赤血球・白血球・血小板の血球成分と、血漿と呼ばれる多くのたん白質を含む液体成分の混合物です。


図1.血液の成分と働き(クリックで拡大)

血漿には、生体に有用な作用を示す、種々のたん白質が含まれています。


図2.血漿の成分と働き(クリックで拡大)

Q2 血漿分画製剤はどのように製造されるのですか?

人の血漿から、医薬品として有用なたん白質を個々のたん白質の性質の違いを利用して、物理的・化学的な方法で分離・精製し、医薬品として製品化します。

(参考)

血漿たん白質を分離・精製する方法には次のような方法があります。

  • エタノール分画法:血漿にエタノールを加えて、温度などの条件を調整しながら、様々なたん白質を分離する方法。
  • ポリエチレングリコール分画法:ポリエチレングリコールと呼ばれる、毒性の低い水溶性の合成高分子物質を用いてたん白質を沈殿させ、目的とするたん白質を分離する方法。
  • クロマトグラフィー処理法:吸着物質(分離用ゲル)を用いて、目的とするたん白質を分離・精製する方法。

Q3 日本血液製剤機構の血漿分画製剤ではどのような血液が原料として使われていますか?

日本血液製剤機構の血漿分画製剤は、日本赤十字社で採血された献血血液から製造しています。ただし、献血血液では対応できない一部の製剤は米国のドナーセンターで採取された血漿から製造します。

米国ドナーセンターで採取した血漿から製造している製剤には、抗D人免疫グロブリン製剤、抗HBs人免疫グロブリン製剤、抗破傷風人免疫グロブリン製剤があります。 (それぞれの製剤がどんなお薬かについては、Q.5を参照下さい)

(参考)

日本赤十字社では、献血時の医師による問診や、採血した血液に対するウイルス検査など、献血された血液の安全性を高めるための対策が実施されています。

日本血液製剤機構が使用している米国から輸入した原料血漿も、米国のドナーセンターで採血時の医師・看護師による問診や、採取した血漿に対するウイルス検査など、安全性を高めるための対策が実施されています。又、ドナーセンターは、FDAならびにIQPPの認定を受けた施設です。
  • FDA:食品医薬品局(Food and Drug Administration)。食品や医薬品などの許可、取りしまりを担当するアメリカ合衆国の政府機関。日本の厚生労働省に相当する機関です。
  • IQPP:品質の高い原料血漿を採取するためのプログラム(International Quality Plasma Program)。 米国血液資源協会(現在の血漿蛋白製剤協会)によって定められた業界の自主的なプログラムで、米国だけでなく米国以外のドナーセンターでも実施されています。

Q4 日本血液製剤機構の血漿分画製剤はどのような安全対策が行われていますか?

血漿分画製剤は、生体由来物質である血液を原料としているため、ウイルスなどの感染性物質混入の可能性を完全に否定することはできません。 そこで日本血液製剤機構ではより安全な血漿分画製剤を提供するために、さまざまな安全対策を実施しています。

日本血液製剤機構の血漿分画製剤における安全対策
日本血液製剤機構では、次の3段階における安全対策が重要であると考え、それぞれの段階で安全対策を実施しています。

1)原料段階における確認
2)製造段階におけるウイルスの除去・不活化対策
3)最終製品段階における確認
1)原料段階における確認
採血施設(献血血液を原料とする製剤は日本赤十字社、米国で採取された血漿を原料とする製剤は米国のドナーセンター)および日本血液製剤機構では、原料血漿について次に示す確認を実施しています。

①原料となる血液を採血する段階で、供血者に問診や臨床検査などを実施し、健康状態等が基準に適合していることを確認します。

問診では、エイズや肝炎などの感染症にかかっている疑いはないか?クロイツフェルト・ヤコブ病発症の疑いはないか?海外渡航歴や欧州滞在歴はないか?などが確認されます。

②採血した血液に対して、ウイルスに対する検査を実施します。

検査を実施しているウイルス

  • B型肝炎ウイルス
  • C型肝炎ウイルス
  • HIV(エイズウイルス)等
2)製造段階におけるウイルスの除去・不活化対策
原料血漿の段階でウイルス混入の確認を実施していますが、検査項目以外のウイルス(未知のウイルス)や、ウインドウ・ピリオド(ウイルスに感染しても、検査で検出することが出来ない期間)の問題、ウイルス変異の可能性、などの点からウイルス混入の可能性をゼロにすることはできません。
そこで、万が一ウイルスが混入した場合でも安全性を確保するために、製造段階において次のようなウイルス除去・不活化工程を組み合わせて実施しています。
SD処理

化学処理によってウイルスの感染性をなくす不活化方法です。

ウイルス除去膜による処理

非常に細かい網目のフィルターを用いてウイルスを除去する方法です。

加熱処理

熱によってウイルスを不活化する方法です。溶液状態で加熱する方法と、乾燥状態で加熱する方法があります。

低pH液状インキュベーション処理

低いpH(pH 4程度)、温度20~30℃で一定期間保存することによりウイルスを不活化する方法です。

3)最終製品段階における確認
製造された最終製品に対しても、次のウイルスについて試験を実施し、混入がないことを確認しています。

【最終製品において確認試験を実施しているウイルス】
  • A型肝炎ウイルス
  • B型肝炎ウイルス
  • C型肝炎ウイルス
  • HIV(エイズウイルス)
  • ヒトパルボウイルスB19
日本血液製剤機構では1)~3)の安全対策を実施しており、現在販売している製剤によるウイルス感染は確認されていません。しかしながら、最新の科学技術による安全対策を実施していても、人血液を原料としていることによる感染症伝播(でんぱ)のリスクを完全に排除することはできません。

他 疾患関連のよくあるご質問 (重症筋無力症、くりかえす中耳炎、CIDP、川崎病、ITP、多発性筋炎・皮膚筋炎 、Rh式血液型不適合妊娠、肝移植後のB型肝炎の予防)

Q5 人免疫グロブリン製剤とは、どんなお薬ですか?

私たちの体を感染から守るのに重要な血漿成分は、抗体あるいは免疫グロブリンとよばれています。人免疫グロブリン製剤は、人免疫グロブリンを成分とするお薬です。投与対象となる疾患や投与方法によって、さまざまな人免疫グロブリン製剤が製造・販売されています。

静注用人免疫グロブリン製剤
  • 体が細菌やウイルスを排除しようとする働きを助け、免疫力を高める。
  • 抗菌薬と同時に投与することで、治療の効果を高める。
  • 血小板の数を増加させ、出血をおさえる。
  • 川崎病による心臓の動脈炎をおさえる。
  • 多発性筋炎・皮膚筋炎による筋力低下を改善する。
  • 多発性運動ニューロパチーを含む慢性炎症性脱髄性多発根神経炎による筋力の低下を改善する。
  • 全身型重症筋無力症の症状を改善する。
  • 天疱瘡の症状を改善する。

以上のような作用をもったお薬です。

筋注用人免疫グロブリン製剤
病体が細菌やウイルスを排除しようとする働きを助け、免疫力を高める作用をもったお薬です。
抗D人免疫グロブリン製剤
Rh式血液型がRhマイナスの妊産婦に注射することで血液中にRhプラスに対する抗体ができないようにし、次に妊娠したとき、おなかの子供が溶血しないようにするお薬です。
抗HBs人免疫グロブリン製剤
B型肝炎の発症を予防するために用いるお薬です。
抗破傷風人免疫グロブリン製剤
破傷風菌が出す毒素を速やかに中和して、破傷風の発病を予防したり、症状を軽くするお薬です。

血友病 関連のよくあるご質問

Q6 アルブミン製剤とは、どんなお薬ですか?

アルブミン製剤は、

  • 血管内の水分量をふやし、血液の流れを調節する
  • 出血によるショックを改善する
  • むくみや胸水、腹水などを軽減する

作用をもったお薬です。

Q7 アンチトロンビン製剤とは、どんな薬ですか?

さまざまな病気をきっかけに血液の調節機能が悪くなり、血管内で血液が固まったり、また逆に傷からの出血が止まらなくなったりすることがあります。このような時に、欠乏しているアンチトロンビンを補充することで、血液を固める調節機能を正常にもどすように働くお薬です。

Q8 ハプトグロビン製剤とは、どんなお薬ですか?

やけど、輸血、心臓の手術などをした時に、赤血球がこわれることによっておこるヘモグロビン血症やヘモグロビン尿症(血色素尿症)を改善するお薬です。


(参考)

ヘモグロビンとは赤血球の中にあるたん白質で、血色素ともよばれています。酸素を運搬する役割を担っています。

Q9 血液凝固因子製剤とは、どんなお薬ですか?

血液を凝固させる(固まらせる)成分(血液凝固因子)の作用によって、出血をおさえるお薬です。
血液凝固因子の種類によって、さまざまな製剤が製造・販売されています。

トロンビン製剤
トロンビンは血液凝固因子のひとつで、出血部位で作用して血のかたまりを作ることにより、止血効果を発揮します。
フィブリノゲン製剤
生まれつき血液を凝固させる成分(フィブリノゲン)が少ない人にフィブリノゲンを補充することで、出血をおさえるお薬です。
血液凝固第VIII因子製剤
血液を凝固させる成分(血液凝固第VIII因子)が不足している人に血液凝固第VIII因子を補充することで、血が止まりにくくなっている状態を改善するお薬です。
血液凝固第IX因子製剤
血液を凝固させる成分(血液凝固第IX因子)が少ない人に血液凝固第IX因子を補充することで、血が止まりにくくなっている状態を改善するお薬です。
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