目次

18.エイジング・ケア

Q

高齢になり、血友病に加え、生活習慣病も恐いと感じています。定期健診も受けていますが、普段の生活などで気をつけるべきことを教えてください。

A

カウンセラーがこのお返事をすることは、本来、適切ではないかもしれません。症状は皆さん、異なりますし、何よりも我々は身体の専門家ではありません。健康管理上の注意点は主治医にお尋ねください。よく忙しい先生に遠慮して質問ができないままに、診察室を出る方がいます。質問は事前にリストにしておくとよいです。また先に看護師さんに預けておけば、先生でなくても答えられることは答えてもらえるかもしれません。

さて治療法の進歩により血友病の患者さんが長生きするのは当たり前になっていますが、その分、高齢化に伴う、様々な相談が増えているのも事実です。たとえば、老眼や白内障の傾向が進めば、それまで、できていた自己注射ができなくなるかもしれません。最近は娘や姪などの家族(なぜか女性家族が多いのですが)が改めて、家庭治療の訓練を希望する例も増えてきました。白内障の手術ができるとは聞いていますが、不安でためらう人も多くいらっしゃいます。家族が近くにいない人の例では、注射をしてくれる近所の医療機関を見つけなければなりません。

また年齢が高くなれば、血友病でなくても関節の痛みで悩むようになります。出血を繰り返した皆さんには、良い状態を保つため努力がとくに必要でしょう。毎日のリハビリテーションや定期補充はそのための有効な手段と言われています。しかし、分かっていても長続きさせるのは大変。そこで長続きさせるコツですが、それは「やりたいこと」を見つけること。良い状態を保って何をしたいですか。目的を明確に意識している人ほど意欲を維持できます。そして、たまには息抜きすることも織り込んでおいてください。リハビリテーション課題が100%できないからといって止めてしまうよりは、半分でも続けている方がよいのです。続けているうちに出血が減れば、動機も高まってくることでしょう。これはリハビリテーションだけではありません。カロリー制限や減塩食を勧められたときも同じです。健康を維持するのは手段と考え、元気になってやりたいことを意識し、時にはサボることも計算して実行することが継続のコツになります。

最後に長期間ストレスに晒されると、知らず知らずのうちにうつ的になってしまう人がいます。一般的に身体の病気はすぐに認められる人でも、心の変調に関しては意志が弱いとか、自分の怠け癖が悪いと自分を責めがちです。初期であれば、気分転換で何とかなるかもしれません。男性は女性に比較して対人関係を苦手とする人が多いという研究結果もありますので、前もって意識して多くの人と接して、関係作りをしておくのもよいでしょう。しかし、不眠が続いたり、趣味が楽しく感じられなくなったり、飲酒量が増加するようでしたら、注意信号です。早いうちに主治医やカウンセラーにご相談ください。恥ずかしいことではありません。明るく笑って生活することは生活習慣病の予防効果もあります。