Q
子どもが部活で運動部に入りたいと言っています。
スポーツによっては、将来、関節障害を起こす原因になるのではないかと
心配しています。
どのように選択していくべきでしょうか。
A
中学生になれば、こうした相談は増えます。思春期は自分の力を試したくなる、いろいろしたい気持ちが強くなります。同じように親は「いつまでも子どもの面倒を見られないのだから、病気がある分、しっかり自立してほしい」と願いつつ、「未だ子どもだし、体が心配でつい先回りして、何かと口も手も出してしまう」のです。親も揺れ動く時期と言えましょう。しかし、出血を心配して運動部を断念させても、隠れて運動したり、無茶したり、友人と乱暴にふざけたりする子は多く、反対に親が筋力をつけてほしいと運動を勧めても文化部に入部するお子さんもいます。子どもによって志向が違うのは、他のお子さんと変わりません。
確かに長距離走や格闘技などのスポーツを部活ですれば、出血は多くなるでしょう。しかし、重症度、定期補充や関節障害の有無によって可能かどうかは異なり、一概に決めることもできません。まず主治医に意見を聞きましょう。ただ血友病の症例数の少ない病院ではどうしても慎重になり、過剰に制限する方向になりがちなので、納得できなければ専門医を訪れてセカンドオピニオンを得てください。専門医がOKであれば、多少は安心して送り出すこともできるでしょう。ただし事前の承認条件としてドクターストップがかかった際には、必ずやめることを約束してもらう必要があります。周囲が「出血したから禁止」と言い渡しても、それが突然であれば、子どもは納得しません。部活をはじめる前に入部条件として納得してもらうことが大切です。
定期補充療法についても同様です。幼少期は親のするまま、児童期は親の言うままに輸注をしてきた子も、思春期に入ると、定期的には注射しなくなる例が増えます。これは通過儀礼といってもよい現象で珍しくありません。要は親から与えられた行為から、自らが選んだ行動へ切り替える時期ということです。親子の意向が違うのは血友病に限ったことではありませんし、むしろ血友病患者さんは親の言うことをよく聞くほうです。しかし、心理的にこれまで親の言うままに注射してきたが、本当に自分には注射が必要なのか、定期的に注射しなくてはいけないのか、注射なしでどこまでやれるかを知りたくなるのです。「幸いにして」入部後、すぐ出血が増えた子は注射を再開しますが、今度は自分で決めたことなので、親に言われなくても自主的にするようになります。「不幸にして」出血が少ないままで過ごせてしまうと、定期補充は中断してしまうかもしれません。そうなると必要性を自分で実感しない限り、なかなか再開しないこともあります。焦らずに待ちましょう。
下した判断が結果として多くの出血を招いても、自分で決めたことであれば、それは本人にとっての経験となり活かされ、成功すれば自信となります。人に決められたことは失敗すれば恨みになり、成功しても自信にはなりません。本人の決断を尊重してあげてください。