Q
血友病患者の医療費って誰が払っているのですか?
A
今回は医療費についてのお話ですね。「血友病は医療費がかからないから、それほど関心はない」なんて思っていませんか。確かに、平成27年1月1日から実施された小児慢性特定疾病医療費助成制度の改正においても、多くの難病に自己負担があるにもかかわらず、血友病患児への助成は従来通りになりました。つまり負担がないままです。しかし、これについても全く議論がなく決まったわけではありません。詳しく述べませんが、現在のように、血友病患者さんが自宅で補充療法を行えて、凝固因子製剤を医療費の心配なく使用できるようになった陰には、先輩患者さんたちや関係者の並々ならない苦労がありました。
誤解されている方もいらっしゃるようなので、あらためて、この医療費助成の適用範囲について述べたいと思います。原則的には加入している健康保険に加え、特定疾病療養費、小児慢性特定疾病医療費助成制度または先天性血液凝固因子障害等治療研究事業により、血友病の医療費が助成されていますが、これらを使って無償化されるのは、血友病に関連する医療費だけです。たとえば、虫垂炎(いわゆる盲腸炎)を起こして手術したとすれば、入院や手術に関する部分については三割負担が求められ、術前・術後に使用する製剤とその管理に関する費用のみが無償になるのです。しかし、現実にはどこまでを血友病と関連する疾患とし、関連ある治療にするかの線引きは難しいものがあり、医療機関によって見解の相違が起こることもあります。
注意してほしいのは、特定疾病療養受給者証の更新を忘れることです。会社が替わった、転居した際など、手続きが必要なのに忘れて、うっかり薬を処方してもらって受け取ると、それこそ何百万円もの請求が行われる可能性があります。慌てて申請しても、遡れるのは申請した月の1日まで、前月分は無理です。保険証が替わったら、替わった先の健康保険組合に相談して申請手続きをしなくてはいけませんし、病院と保健所には報告してくださいね。蛇足ですが、小児慢性特定疾病医療費助成制度の改正により医療機関や医師の指定が必要になりました。受診の際や診断書を書いてもらう際にちょっと気をつけていてください。
その診断書などの病院で書いてもらう様々な書類の費用ですが、原則、「診断書」と表記されている書類に関しては費用がかかると憶えておいてください。小児慢性特定疾病医療費助成制度、先天性血液凝固因子障害等治療研究事業、特別児童手当、障害年金、身体障害者手帳などに関する「診断書」にはコストが請求されます。それに対して「報告書」や「意見書」となっているものに関しては定められておらず、医療機関の判断に任されています。実際には薬害裁判の和解の経緯から費用はとられないことも多いようです。
費用に対しての皆さんの意識についても千差万別です。共通するのは高額になって、健康保険組合などで目立ちたくないという気持ちぐらい。なるべく製剤を使わないでおこうと考える人から、身体の不安が解消されるならどんどん使いたいという人もいます。健康保険組合への拠出金で支えられていることを申し訳なく思う人もいれば、健康に過ごす国民の権利を行使しているだけと考える人もいます。いずれにしても、費用の多くは所属する健康保険組合が負担し、残りを国や自治体が負担しています。今後、負担者から説明を求められる時代もくるかもしれません。その時に適正使用であると言える使い方をしつつ、それを証明する輸注記録をきちんと残しておくことが重要ですね。