今回は重量物や作業環境要因に関するお話です。重量物を運搬する時の腰痛などの怪我のリスクは、重量物が重くて持ちにくい場合や不良な作業環境によって高くなります。
両手でなければ持ち上がらない重さ、持ち上げると前が見えないくらいの大きさの重量物を扱う作業では、小さくて運びやすい物に比べて身体の重心から距離が遠くなりますので、余計に力を必要とするため、腰部や腕にダメージを受けやすくなります。
障害物が通路にあって避けながら進まなければならない場合や、作業スペースが狭い場合は、不自然な姿勢を取らざるを得なくなり、腰部や四肢の関節に過大な負荷がかかるため怪我のリスクが高くなります。
作業頻度が多ければ重量物が軽い物であっても疲労により、リスクが高くなります。
履物や床が滑りやすい場合は、力が入れにくいのでバランスを崩しやすく、怪我に繋がります。
照明は、できるだけ明るくしましょう。特に足元が暗いと危険です。実際に床下収納の蓋が開いているのが分からずに穴に落ちて、大腿骨を骨折したという患者さんもいます。
連続作業時間と休憩時間は、疲労を溜めないよう無理のないように計画することが必要です。
服装は、汚れてもOKな動きやすい長袖・長ズボンの作業着を選ぶことで、擦り傷などの怪我も防ぐことができます。
作業速度は速ければ速いほど瞬間的に大きな力を必要としますので、腰部や四肢の筋肉を傷めやすいです。
作業には万が一に備えるためにも複数人を集めて、マンパワーをできるだけ多く確保することも大切です。実際に、ガラス棚の運搬中にガラスが障壁にぶつかって割れ、割れたガラスが刺さり、肘の動脈を切る事故が起きましたが、一緒に作業していた人に傷口をタオルで圧迫しながら上腕を紐で縛ってもらうなどの止血処置をしてもらいつつ、迅速に救急車を呼んでもらってすぐ病院に行けたので命拾いしたという話を聞いたことがあります。
重量物の運搬作業をするときは、できるだけ共同作業を行えるよう人数を集めて、通路の障害物を除去または整理整頓し、十分な作業スペースを確保して、 無理のない作業計画を立て、怪我をしないようにしましょう。