今回から体幹筋のトレーニングについてのお話です。体幹とは、頭・腕・脚の部分を除いた胴体部分のことです。動きの中心軸となるのは背骨で、前後左右に湾曲できる他、回旋の動きが加わり、とても複雑に動きます。体幹を胸郭部・腰腹部・骨盤部の3つに分けて見てみると、胸郭部には後面の12個の胸椎と左右の側面に12対の肋骨と前面に胸骨があり、また骨盤部には後面の仙骨・尾骨と左右に大きく展開する頑丈な寛骨(腸骨+坐骨+恥骨)がありますが、腰腹部の骨は、後面の5つの腰椎しかありません。腰腹部の支えは、腰椎の他は胸郭と骨盤を結ぶように付着する筋・筋膜・腱があり、柔らかい内臓を支えています。このため、体幹トレーニングでは特に腰腹部の筋肉をトレーニングすることが重要となります。
血友病では、腕や脚の関節内出血の後、痛みと腫れで安静にするため出血した関節の周囲の筋力が弱くなりますが、全身的にも運動量が低下するので体幹の筋力も弱くなります。関節内出血後のリハビリは、出血した関節と合わせて体幹もトレーニングしていきましょう。
体幹を鍛える最初のステップは、ドローインという呼吸方法を覚えることから始めると良いと思います。この方法を覚えることによって、腰椎を軸に腰腹部を一周する筋肉の壁をつくることができ、まるで頑丈なコルセットをしたような状態になり、四肢を動かすときに安定性が得られます。この方法で鍛えたい主な筋肉は、横隔膜、A 多裂筋(たれつきん)、B 内腹斜筋(ないふくしゃきん)、C 外腹斜筋(がいふくしゃきん)、D 腹横筋(ふくおうきん)、E 骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)です。これらの筋群は、比較的深層部にあり、姿勢の維持に働く筋肉です。鍛えるといっても意識して筋肉を収縮するだけですが、これらの筋は練習しないと上手く連動させて収縮することができませんので、無意識にできるようになるレベルまで何度も練習する必要があります。
満腹時、腰痛の強い症状がある場合、女性の方は妊娠中と出産直後は避けるようにしてください。
ドローインをしっかりできるようになってから、次の体幹筋のトレーニングにステップアップしていきます。次回は、次のステップをご紹介したいと思います。ドローインは、パワーアップトレーニングの補助的なトレーニングとしても有効ですし、姿勢の改善やウエストシェイプの効果が期待できます。ぜひ覚えて実践しましょう。
仰向けに寝て膝を60~90°くらい曲げて膝を立てた姿勢を取ります。
トイレで小便を途中で止めるような感じです。
背中を反るように背中の筋肉に力を入れます。
ベルトの位置にある骨盤前面の出っ張りから指2~3本内側の柔らかい部分に人差し指を押し当て、息を鼻から吸ってお腹を膨らませます。次にお腹に力を入れ、指で押している筋肉(内・外腹斜筋・腹横筋)を硬く収縮させながら息を口からフーッと吐き、お腹をしっかり凹ませます。
次に、指で押し当てている筋肉を硬く収縮させつつ、お腹を凹ませた状態をキープしたまま、胸を膨らまして息を鼻から吸って、口から吐きます。
お腹に力を入れるときに腹直筋は力が入りやすい筋肉ですが、ドローインは腹直筋ではなく腹横筋・腹斜筋群の収縮を意識することがコツです。また、息を吸うときも吐くときもお腹を凹ませ、指で押している筋肉の力は抜かないことが大切です。慣れてきたら丹田(おへその約6㎝下)を意識して凹ませ、深い呼吸をしていきます。