• 肩こり1

Training 15肩こり1

今回は「肩こり」についてのお話です。肩こりは腰痛と並んで日本人にとても多く、厚生労働省が行っている国民生活基礎調査でも、肩こりの自覚症状の有訴率は毎回女性で1位、男性で2位にランクインしています。当院で診ている血友病の患者さんたちからも、肩こりの訴えをよく聞いています。肩こりは、首の後ろ側の項(うなじ)部分から僧帽筋(そうぼうきん)の領域に生じる、重苦しく、詰まったような不快感や痛みの症状の総称です。肩こりがよく見られる筋は、僧帽筋、後頭下筋群(こうとうかきんぐん)、肩甲挙筋(けんこうきょきん)、半棘筋(はんきょくきん)、板状筋(ばんじょうきん)、棘上筋(きょくじょうきん)、大・小菱形筋(りょうけいきん)、斜角筋群(しゃかくきんぐん)、胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)といった上部肩甲帯と頸部の多くの筋に見られます。

学習方法

肩こりの正体は、筋肉内部の筋線維が勝手に持続的に収縮した部分です。これは血液とリンパ液の循環不良で疲労物質が貯留したために起こり、力を抜いてもこの部分の筋線維が伸びないため、周りの筋肉と比較して触るとコリコリした感触があり、硬結(こうけつ)と呼ばれています。硬結が長期に続くと、筋線維束を包む筋膜が偏って硬くなって皺(しわ)ができ、筋線維が縮む癖ができてしまうため、硬結を再発しやすくなると言われています。また、循環不良で酸素欠乏になると、微細ですが筋組織や末梢神経の組織を傷めてしまい、プロスタグランジンなどの炎症物質やブラジキニンなどの発痛物質の分泌が促されます。すると、炎症や疼痛刺激で知覚神経が興奮し、硬結部分が痛みに過敏になり、圧痛点(トリガーポイント)となります。また、炎症と疼痛刺激は交感神経を興奮させ、血管や筋肉が収縮し、更なる循環不良を引き起こすため、硬結が悪化するという悪循環に陥ります。

肩こりの悪循環

肩こりの原因

次に、肩こりの原因ですが、様々な要因が関係していると考えられています。まず、頭と腕の重さです。人の頭の重さは成人で体重比約10%、腕は約7%と言われています。体重60kgだと頭が約6kg、両腕では約8kgにもなる計算です。寝ている状態から起き上がると、重力に頭と腕が引っ張られるので、頸(くび)と肩甲骨周囲の関節と筋肉がこの重い頭と腕を支えることになります。同じ筋肉が働き続ければ、やがて筋肉は疲労します。筋肉の中に疲労物質が溜まると硬結になります。次に、整形外科系の疾患です。頸椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄、変形性頸椎症、胸郭出口症候群などは、頸の神経が絞扼(こうやく)・圧迫され、ダメージを受けた神経支配下の筋肉は硬くなり、筋内の広範囲に硬結が生じます。そして、内科系の疾患です。病気の徴候として肩こりになる場合があり、内臓一体性反射の一つと考えられています。よく知られているのが、肺、心臓、胃、十二指腸、肝臓、膵臓の病気です。「五十肩で左肩が張って痛い」と1年近く訴えられていた患者さんが、内科検診で胃がんが見つかり、胃を切除したところ左肩の痛みが治ったということもありました。

いろいろな投薬や治療を試しても良くならない難治性の肩こりの人が、内科検診で内臓の病気が見つかるケースは稀ではありません。思い当たる原因が無いのに急に慢性の肩こりになった人は、特に注意しましょう。

その他

運動不足、身体に合わない枕の使用など下記に挙げられるような様々な原因も考えられます。

  • 天候

    寒冷、強風、低気圧

  • 心因

    緊張、悩み、うつ、精神的ストレス

  • 度が合わない眼鏡の使用、長時間のパソコン・スマホの使用、眼精疲労

  • 顎(あご)

    顎関節症、虫歯、歯の噛み合わせ不良

  • 服装

    きつい服、コートなどの重い服、重いバッグ、重い靴、ネックレス

  • 姿勢

    猫背、肥満、長時間の不動、下向き作業